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オルソケラトロジーの限界を超えた治療法 オサート

オサート/オルソK協会

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10月12日付け読売新聞について~裏付けのない報道に問題あり

06.10.13

10月12日付け読売新聞「医療ルネサンス」の記事において、一部に正確な情報に基づかない報道がありましたので、この欄で解説します。

この記事はオルソKに対する一般的な原理とともに、レーザー治療と比較した場合の利点などについて、東京女子医大眼科松原正男教授のコメントを中心に記述されています。

「この治療の最大の短所であり、長所でもあるのは『治療をやめれば元に戻る』ことだ。・・・・治療をやめれば、『ほぼ一ヶ月で元の視力に戻る』(松原さん)。後に老眼になった時のことを考えると、角膜を削って元に戻せないレーザー手術より有利、との声もある。」という賛同的な記述の後に

「一方、中国や台湾では、レンズ装着で感染症を起こし、失明した例もある。」と続き、さらに
「成長期の子供では将来への悪影響を懸念する眼科医もおり、まだ不明な点も多い。」と結んでいます。
私も新聞をはじめ雑誌、テレビ、ラジオなどから多くの取材を受けますが、一般にこれらのメディアにおいては、肯定的な面ばかりを前面に出すのではなく、必ずその逆の立場からの批判的側面も併記して、記事の中立性を保つことは良く理解しています。

しかし、今回の報道の大きな問題は、その批判的な記述についてキッチリとした証拠を取らずに掲載している点です。

私は12日の夕刻、読売新聞に電話し医療部の高橋氏にこの点をお話しました。翌13日の朝には、この記事を担当された田村記者から詳しいお話を伺うことができました。それによれば、「失明した。」と断定的に言い切っている記述において、その事実を全く確認していないとのこと。松原教授の言をそのまま引用し、論文や学会などでの症例報告など、一切の裏付けをとることなく記載したとのことです。これは大きな問題であって、基本的にオルソKの適切な装用を続けた場合に、失明に至るような重篤な感染症は起こりえません。実際、この技術が開発された米国においては、訴訟例など一例も生じていないことが、この治療が技術のある医師のもとで適切に行われれば、きわめて安全で効果のあるものであるかを物語っています。

問題は、中国や台湾においては、一人ひとりの角膜形状に合わせたフルカスタムのレンズを用いず、テストレンズをそのまま夜間装用するような粗雑な治療により、レンズが角膜に密着して涙液交換を妨げるために細菌が増殖する事態を招いたことに原因があります。オルソKにおいてはレンズの適切なフィッティングを保つために、クリニック内でレンズカーブに微妙な調整を加えるpolishingあるいはblendingの技術が絶対に必要となります。米国において、この技術を持たずにオルソK診療を行うところはありません。しかし、中国や台湾、そして最近では日本においても、このpolishing技術をもたずに治療を開始した場合、適切なレンズフィッティングを保つことができなければ、重篤な感染症を生じ得ます。

加えて、これらの国々では医師が患者様方に対して適切なレンズの装用プログラムを指導できなかったため、レンズを一週間以上も連続して着けっ放しにしてしまった結果、さらに重篤な事態を招いたと聞きます。このような装用は、本来のオルソK診療とは全く別次元の問題であって、それ自体、とてもオルソKと呼べる治療法ではありません。

かように、重篤な事態を招いたバックグラウンドを何ら説明することもなく、上述のごとき記載
「一方、中国や台湾では、レンズ装着で感染症を起こし、失明した例もある。」
に及ぶのは、正確な報道とかけ離れているとしか言いようがありません。

まして、この記事を担当した田村記者自身が、このようなバックグラウンド的状況を理解されていなかったのです。

本来の治療形態であれば、安全性を確保した上での十分な視力改善効果が見込まれるものが、およそ正当なオルソK診療とは呼べぬ状況から生じた事態で批判を受けるのは不当ではないでしょうか?

記事ではさらに、子供に対する治療への懸念に及んでいますが、「この治療はむしろ小児にこそ有効である」というのが、この治療領域の世界の専門家達の一致した見解です。私は年間10以上に及ぶ国際学会で、積極的に症例報告や研究発表を行っています。オルソKに関するテーマのある学会には全て出席しています。これらの学会の中では、1時間の教育的講演を依頼されたりもしてきました。海外のオルソK事情に精通しているつもりです。その中で、かつて一度も小児に対する治療を危惧した発表や文献に接したことがありません。そればかりか、かつて日本コンタクトレンズ学会誌には、小児におけるオルソK治療の治験的報告(第32巻第3号P158~165「小児のOrthokeratologyによる近視減少効果について」)と共に、角膜の安全性を評価する角膜内皮細胞には何ら影響が出なかったことが記載されています(第32巻第3号P150~157「近視および乱視眼に対するオルソケラトロジーの試み」、第33巻第1 号P34~38「酸素透過性ハードコンタクトレンズによるOrthokeratologyとその角膜内皮細胞変化」)。最近では、日本でも眼科関連の学界でこの治療がテーマに取り上げられることが多くなってきましたが、そのいずれもが角膜内皮には影響を与えない内容の報告です。

仮にこの領域の国際学会で、「成長期の子供では将来への悪影響を懸念する」などの発言がなされれば、それはすなわちこの治療の国際的な評価を全く知らない医師との評価が下されることでしょう。もしオルソKを本当に勉強し、その正統な技術を習得したいとする医師であれば、是非とも積極的に海外の学会に出かけ、この治療に40年以上に渡って関わってきた多くの先駆者たちの報告に耳を傾けるべきでしょう。

現在の日本におけるオルソKの一般的な知識が、断片的な情報の聞きかじりと、科学的根拠に希薄な感覚的状況であることを、非常にもどかしく思います。是非、この治療の本来の姿を正確に理解し、正統派のオルソK診療が日本に根付くことに努力しようではありませんか!

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